【生い立ち】 ある錬金術師は考えた。ホムンクルスが人間の血液で作れるのであれば、長寿の象徴でもある樹木からホムンクルスを作れないものかと。もしこれが可能であれば、錬金術も前進することだろう。 しかし研究は日を増すごとに問題が生じ、失敗した成り損ないの山が増すばかり。いつしか錬金術師はその研究を断念し、失敗作を庭に埋め、遠方へと旅に出掛けた。 それから数百年。例の錬金術師が住んでいた廃墟には不思議な草花が咲き誇っていた。 四季に合わせて種を飛ばしていく兄弟達。 その様子を何度も見送っている蕾があった。 蕾は花は勿論、成長も殆どせず、ずっと蕾のままだった。幾度も過ぎていく景色を、ただただじっと眺めていた。 眠い。とても眠い。 今年もまた、あの寒い日が来るのか。 そう思っていた矢先、外から声が聞こえた。何百年ぶりかの人の声は無遠慮に語りかけてくる。こちらは応える術を持ち合わせていないというのに。 すぐに飽きるかと思われた声は何日も続いた。 そんなある日、不意に自身の様子に変化が見えてきた。驚きつつも、それで合点がいった。 何故、自分だけ取り残されたのか。 何故、自分だけ蕾のままなのか。 何故、人の声に変化したのか。 …成程。どうやらこの冬は凍えずに済みそうだ
【現在】 現在は生まれた土地を離れて亜空間に拠点をおいている。世界を知るために様々な本を集めていた為、その空間はいつしか『亜空間の書庫』と呼ばれるようになった。ならばついでだ。この空間を開放するか。 そんなわけで、亜空間書店『エメロカル』の会館準備中。